研究概要 |
本研究は,鉄筋コンクリート造(以下,RC造)の構成材料であるコンクリートの二軸応力下における軟化性状に起因するRC造耐震壁のせん断軟化性状がRC造耐震壁フレーム構造の応答性状,耐震性能に与える影響を解明することを目的とする解析的研究である. 本年度は,とくに本構造による建物の静的な耐震性能に焦点を当て検討を行った.以下に,その内容と得られた成果をまとめて示す. 文献1)において筆者が既に設計した1階が柱と耐震壁により構成される6層のRC造ピロティ建物(ピロティを有する耐震壁フレーム構造)を対象に,その1階(ピロティ階)部分を補強する場合の補強効果について検討した.とくに1階の耐震壁を割り増し1階の耐震壁断面積を2階と等しくした建物(概ね整形な耐震壁フレーム構造)についてPushover解析を行い,補強前後の性能を比較した結果,建物の耐震性能すなわち耐力,変形性能ともに大幅に改善され,本構造の耐震補強にはピロティ階の耐震壁の増設が有効であることが明らかとなった.しかしながら,建物(連層耐震壁)が脚部で曲げ降伏した後も,曲げによる損傷とともに脚部のせん断剛性が低下するため(せん断軟化),やがて変形が脚部に集中するようになり,最終的には1階耐震壁がせん断破壊して建物が層降伏メカニズムに至ることを示した.すなわち,本構造の終局域における耐震性能を解析によって正しく評価するためには,二軸応力下におけるコンクリートの軟化性状を考慮して耐震壁をモデル化する必要があることが明らかとなった.また,この結果は耐震壁の曲げ降伏後のせん断軟化性状を評価しない従来用いられてきた解析モデルの適用限界を同時に指摘している. 1)真田靖士、壁谷澤寿海、倉本洋:ピロティ構造における柱と壁のせん断力負担に関する解析的検討,コンクリート工学年次論文集,Vo1.22,No.3,pp.19-24,2000.6
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