研究概要 |
本研究の目的は,耐震設計上の要求性能を満足させながら経済性の高い空間構造物の耐震設計法を提案することである。過大地震入力に対して下部構造や支承部で積極的にエネルギー吸収することにより上部構造への地震入力を低減させるような空間構造物を「エネルギー吸収型空間構造物」と呼び、その実現可能性を示すとともにその設計法を提案する。 本年度はエネルギー吸収型空間構造物の耐震性能を調査するとともに,制振ディバイスの必要性能(累積塑性変形倍率,最大変形,降伏耐力)を検討する。空間構造物の一例として,下部構造,免震層および上部鉄骨ドームからなる構造物を対象とし,下部構造に制振ダンパーを導入したドーム構造や支承部に免震層を導入した「中間層免震ドーム構造」が大地震に対して上部ドームへの地震入力を大きく低減させることを示した。下部構造や免震層の降伏せん断力係数および入力位相差等がドームの地震応答に与える影響を検討し,等価線形化手法と応答スペクトルを用いたモード解析からドームの最大応答値や地震荷重を推定する手法を提案した。また、同様に山形トラス、アーチの応答性状の分析も行ったこれらの成果は国際シェル空間構造学会(IASS)の国際会議で発表するとともに,国内の学術雑誌に投稿した。 応答解析と並行して,実際に建設される件数が多い小中規模の空間構造物の振動計測を行い,数値解析モデルの妥当性を検討した。本年度は,中規模の体育館として岡山ドーム(岡山市に建設中)を対象とし,施工時(9月)と完成時(3月)の2回、常時微動計測を行った。振動計測より,ドームの固有周期,減衰定数および固有モードを同定した。計測から得られた固有振動数は,数値解析結果と概ね一致しており,解析モデルおよび解析手法の妥当性を検討した。これらの成果は平成15年度に国際会議や国内外の論文に投稿する予定である。
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