研究概要 |
伝統的木造建築の保有水平耐力は耐力壁だけでなく,軸組み部分の接合部性能に大きく依存している.伝統的木造建築の軸組みは,特に近世以降になると,住宅建築を中心に「差鴨居」と呼ばれる,比較的大きい断面を持つ横架材と柱で軸組みが構成されることが多い.この柱と差鴨居で構成される軸組みは今日でも伝統的木造建築の主要な水平力抵抗要素であり,その性能は部材と比較して剛性が低い接合部の性能に依存している.そこで,本研究では伝統的木造建築の主要な水平抵抗要素である軸組みのうち特に近世以降の住宅建築で多く用いられている,柱と差鴨居の接合部を対象に静的水平加力試験を行った.試験体は接合部4種類(各3体)合計12体の実物大の部分模型とし,柱頂部に水平変位を与えることにより接合部に曲げモーメントを発生させた.その結果,柱と差鴨居接合部について以下の知見を得た.1.スリップ型の復元力特性を示す.2.1/10rad.まで剛性の低下は認められなく靭性の高い性能を示す.3.接合部性能は,弾性範囲においては木材のめり込み性能から比較的良く推定できる.4.変形が1/60rad.以上から破壊への進行は木栓(込み栓)の2面せん断性能に依存している. 来年度は,木栓のみのせん断試験および材料試験を行うことにより,木製接合具の性能を明らかにし,実験結果に基づいた解析モデルを構築する.
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