研究概要 |
伝統的木造建築の保有水平耐力は耐力壁だけでなく,軸組み部分の接合部性能に大きく依存している.伝統的木造建築の軸組みは,特に近世以降になると,住宅建築を中心に「差鴨居」と呼ばれる,比較的大きい断面を持つ横架材と柱で軸組みが構成されることが多い.この柱と差鴨居で構成される軸組みは今日でも伝統的木造建築の主要な水平力抵抗要素であり,その性能は部材と比較して剛性が低い接合部の性能に依存している.本研究は伝統的木造建築の主要な水平抵抗要素である軸組みのうち特に近世以降の住宅建築で多く用いられている,柱と差鴨居に着目しその接合部性能を明らかにする目的である.本年度は,昨年度行った,実物大の接合部4種類(各3体)のうち一般性の高い2種類を選び,接合部と柱頭の間に土塗り壁が付加された場合の実物大静的水平加力試験を行い,剛性・最大耐力・破壊の進行の考察を行った.その結果,柱差鴨居接合部は回転剛性は母材,土壁と比較すると格段に低いものの,引張り力に抵抗するため土壁のせん断力が有効に発現できることが明らかになった.更に,接合部性能を規定している,込み栓(木栓)を対象としたせん断試験行った.その結果,破壊は主材・側材のめり込みと込み栓の曲げであった.また,込み栓の破壊にはせん断破壊と栓の繊維方向の割裂を伴う曲げ破壊が認められ,後者の方が最大耐力発現時の変形が大きいことがわかった.また,最大耐力は込み栓の比重とほぼ比例関係にあり,針葉樹と広葉樹では後者の方が高いのがばらつきも大きいことが明らかになった.
|