平成15年度は、まずは鋼板を用いた平面フレーム試験体を作成し、本判定装置の有用性について検討を行った。試験体は1スパンで、階数は1〜3階建ての3種類である。スパン長さはおよそ1m、階高はおよそ50cmである。また、層崩壊形と全体崩壊形での違いを検討するために、崩壊形もパラメータとした。降伏部材には極低降伏点鋼(LY100)、非降伏部材にはSN400を用い、目標とする崩壊形を達成させるものとした。振動実験の結果、平成14年度に開発した積分法を用いて、比較的大変形まで精度よく建物の性能曲線を推定できることがわかった。 本判定手法では、余震に対する要求曲線の減衰定数を5%と仮定している。とれは、建物が弾性であるときに仮定される減衰定数である。実際の建物では、巨大地震時には建物の一部が降伏するなどの損傷を受け、損傷による履歴吸収エネルギーにより付加的な減衰が作用する。2000年に改正されて追加された設計法「限界耐力計算」では、この付加減衰を建物の塑性率に応じた関数として定義している。しかし、現状では余震に対する減衰定数を精度よく求める式が無いため、ここでは余震も含めて建物の損傷による履歴吸収エネルギーは無視する形となっている。しかし、実験結果によると、全ての履歴吸収エネルギーを無視することは、安全側の評価であるものの、非常にコンサーバティブな結果が得られ、等価減衰定数の仮定に関しては、今後の検討が必要であることが明らかとなった。 また、これまでの開発結果を元に、残余耐震性能判定装置試作機一号機を作成した。これは、開発最終形を念頭に、モニターやキーボードなどを取り払い、完全ボックス型とし、表示はダイオードによる倒壊・危険・弾性判定表示、およびLCDによる計測最大加速度、等価周期、塑性率、残余耐震性能指標の表示である。今後、本装置を用いて振動実験を行い、判定精度を検証する必要がある。
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