研究概要 |
21名の男子学生を被験者として、室温(19,24℃(SET*))・環境音(空調騒音、風鈴、秋の虫、砂浜の波、新幹線の車内、鳥のさえずり、ミンミンゼミ、大雨)・照度(5,530lux)組み合わせ32条件の曝露実験を行い、環境音が総合的な快適性、特に積極的快適性に与える影響について検討した。サウンドスケープデザインはこれまで、不快な音を単に排除するだけでなく、不快な騒音ではない音として受容したり、あるいは快適な音を積極的に取り入れ、音のもつ効果を最大限に生かす技術として注目され、その応用が期待されていた。しかし本実験により、サウンドスケープデザインは、音を呈示する前の環境が中等度に不快である場合に有効であるにすぎず、消極的快適が維持されている環境や、極端に不快な環境に同じ音を呈示しても、総合的な快適性を向上させる効果は得られないことが明らかにされた。 また、心理的な評価だけではなく、生理的な評価についても行った。すなわち、熱と音の複合条件下における生理反応の経時変動および人体熱収支を検討した。夏期に男子学生10名に対し作用温度5条件(27,30,33,36,39℃)、騒音5条件(46.8,59.2,73.1,80.0,95.4LAeq)の組合せ25条件について、うち8名に対し冬期に作用温度4条件(19,22,25,28℃)、騒音5条件(46.6,58.5,72.9,79.9,95.5LAeq)の組合せ20条件について生理反応を得た。その結果、顕熱放熱量および蒸発放熱量に季節差は認められなかったが、代謝量は夏期よりも冬期の方が約5? 10W/m2程度小さな値を得、これまでの通説とは異なる知見を導いた。 これらより、既に導かれている心理申告に基づいた等快適線図の応用範囲を拡げ、また生理評価により線図の妥当性を高めた。
|