研究概要 |
本研究では,自然風による快適性向上効果や,通風可能期間の明確化を目的として,気象データとCFD解析,快適指標を組み合わせた通風効果評価手法の構築を行っている.本年度に得られた研究成果を以下にまとめる. ・九州地域を対象に,赤坂らによるEA気象データを用いて,日射のない大気状態において,既往の快適指標(SET*,PMV)を用いた通風効果の検討を行い,通風可能期間について検討を行った.その結果,九州東部地域において通風可能性が高いことを示した.また,平均放射温度をパラメータとした解析を行い,通風を有効に利用するためには放射環境を良好に保つ必要があることを確認した. ・夏期における室内放射環境の改善を目的として,低日射吸収塗料・簾・断熱材・表面色による日射遮蔽効果性能について模型実験を行った.その結果,簾・白色塗料では,室内表面温度の低下が期待できることを確認した. ・本研究で対象とする通風解析の根幹となるCFD解析について,計算安定性を向上させる方法について検討し,SIMPLEC法を安定に解くための緩和定数を明らかにした.また,自然風の時変動を考慮した解析を行う前段階として,非定常気流計算法の安定性について検討を行った. ・九州地域の気候特性解析を目的とし,梅干野らが提案した気候特性図,気候マップの整備を行った.また,不快指数を用いた通風可能期間の算定を行った.結果の部を,居住者を対象としたパンフレットにおいて公開した. ・住宅の通風性能を把握するための予備的検討として,多数室換気回路網計算プログラムを作成して気密住宅を対象とした換気計算を行った.峯野らによる実測と照合した結果,プログラムが実用的な精度を有することを確認した.今後,気象データと組み合わせた通風解析を行う予定である.
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