本年度は、昨年度使用した潜熱蓄熱天井材の問題点を踏まえて、新たな潜熱蓄熱天井材の試作を行った。昨年までの石こうボードに潜熱蓄熱材を含浸させたものは、潜熱蓄熱材の含有量が少なく、染み出しの問題があった。そこで、本年度はマイクロカプセル化した潜熱蓄熱材を、グラスウール天井材に混入させ、潜蓄熱天井材を試作した。マイクロカプセル化することによって、染み出しの問題を解決し、グラスウール天井材を使用することによって、潜熱蓄熱材の含有量の増強を図った。 試作において、マイクロカプセル化した潜熱蓄熱材の集合体の形状(粉状、粒状)による、グラスウール天井材への潜熱蓄熱材の含有量の差異、作製工程上の問題点などを検討した。結果として、昨年度の潜熱蓄熱天井材の潜熱量約170kJ/m^<2>に対して、潜熱量約500〜800kJ/m^2の潜熱蓄熱材を混入させることができた。ただし、潜熱蓄熱材の集合体の形状が粒状の場合、混入量の増強は可能であるが、乾燥・プレス工程にてプレス機に天井材が張り付いてしまうなどの問題点があった。 試作した潜熱蓄熱材の含有量を変化させた数種の潜熱蓄熱天井材を用いて、蓄熱性能測定実験を行った。実際の使用状況を想定した温度状態にて、蓄熱・放熱を行い、その熱量の測定を行った。結果として、実際使用を想定した温度状態においては、潜熱蓄熱材が持つ潜熱量の38〜54%の利用であった。これは、天井材の室内側表面側は、室気温に近く、潜熱蓄熱材が凝固できない状態にあったため、潜熱量を有効に利用できなかったものと思われる。 今後は、作製工程上最適な潜熱蓄熱材の形状、含有量の検討が必要である。また、実際使用を想定した温度状態においても、潜熱量を有効に利用するシステムの構築が必要である。
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