1.今年度の研究概要 平成14年度は、近世城下町を基盤とする軍都5都市及び港町都市4都市を対象として、明治・大正期における官庁街の形成と都心改編について分析を行った。 2.今年度のまとめ (1)軍都5都市について 1)旧来の商業地区に近接して設置された官公庁施設 5つの軍都における官公庁施設の設置場所にはいくつかのパターンが見られたが、どの都市においても軍事施設の占拠する城郭周辺部に立地できないため、旧来の商業地区である旧町人地に隣接する場所が選定されていた。 2)官庁街の都市デザイン手法 官庁街の形成は、名古屋のように広小路等の既存の城下町基盤をうまく活用する形でヴィスタの焦点に官庁街を形成したり、仙台のように街区レベルで既存の小広場に面する形で官庁街を形成する、といった各都市独自の都市デザイン手法が存在した。 3)近代都市軸を形成した官庁街と鉄道駅 官庁街の形成は、鉄道駅の設置と共に、明治期における城下町都市の新たな都市骨格を形成・強化する重要な役割を果たした。 4)市民に開かれた官庁街への変容 官庁街は、明治期においては権力の象徴として、ある意味、威圧的な存在だったが、大正期には、図書館・公会堂等の市民利用施設と官公庁施設が集積し、市民に開かれた官庁街が形成された事例が見られた。 (2)港町都市4都市について 1)明確な官庁街を形成しなかった港町都市 計画的に都心部が形成された横浜を除く、新潟・神戸・長崎の3都市では、官公庁施設は分散して立地し、明確な官庁街を形成しなかった。 2)官公庁施設による都市空間の演出 港町都市では、横浜を除いて官庁街の形成は見られなかったものの、個々の官公庁施設に着目すると、港や都市軸をうまく活用した都市デザイン的意図が読みとれた。
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