原風景ヒアリング法は、調査地域において、居住者の生活史についての口述を収集し、その際に、口述される活動とその場所の位置・地形・植生・気候・水環境・土壌環境などをあわせて、聴き取る方法であり、これらの口述+位置情報から、地域の景域要素評価を行う方法である。本研究はこの方法の確立を目的としている。平成14年度は、調査対象地域を設定して原風景ヒアリング法を試行することを当初の予定としており、口述の収集ならびに地形図・航空写真などの収集を、和歌山県田辺市上秋津・中辺路町近露・本宮町伏拝・大阪府貝塚市近木川流域について行った。近露・伏拝・近木川については、口述収集の方法理論の整理、旧版地形図・航空写真の判読についての検討に力点をおいた。上秋津については口述収集作業が最も早く進んだので、これらの情報をデータベースとして構築し、インターネット上での公開・更新を想定した、景域要素インベントリー・システムを試作した。これは、口述本文と位置情報に加え、景域要素のタイプを示す5種類30項目のインデックスを備えたデータベースである。口述そのものとインデックスを備えることで、科学的観察による結果(例えば動植物相など)から、歴史文化的な史跡、伝説や思い出のような意識上の事項まで、一つのデータベースシステム上で蓄積することができ、個々の景域要素がもつ複合的な意味をあわせて収集蓄積することができる。また、地域コミュニティが自主的に管理・運用でき、日常の様々な活用とともに、環境アセスメントの際に最も重要な環境情報として検索を行うことができ、さらに、随時、地域において新たな発見や重要事項が生じた時にも容易に追加更新・訂正することができる利点もある。このシステムは試作段階だが国際会議で発表し、平成15年5月頃より仮公開を予定している。
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