研究概要 |
1.北九州市の市街化調整区域における1960年から2000年までの建築確認申請25,675件のうち、新築の有効データである19,177件を対象として調整区域の全市的な建築実態を捉えた。その結果、住宅用途16,388件では、容積率60%、建ぺい率40%の既存宅地制度の影響が強くみられた。しかし、この形態規制値を超える建築物も1,458件、8.9%が存在していた。非住宅用途2,789件では、建築面積が50m^2以下の狭小な建築物が多く、505件、18.1%であった。一方、極めて大規模な建築物も確認され、これらの建築物は敷地も広大であるため、建ぺい率及ぴ容積率は小さくなっており、建築形態規制の効果が相対的に小さい。 2.建築基準法改正に伴う建ぺい率及び容積率の基準値から4つの規模区分の設定し、建築実態を分析した。その結果、容積率60%、建ぺい率40%を超える権威T区物は全体の約10%であり、(1)1960年代以前の建築物の老朽化、(2)非住宅用途、(3)狭小な敷地面積、以上の条件の建築物において高容積率、高建ぺい率が発生していた。 3.小学校区を基本とした37の地区に区分した後、容積率と建ぺい率を200%・60%、100%・50%、80%・40%の3つの一律規制を適用したと仮定し、既存不適格建築物の発生率を算定し、クラスタ分析を実施した。その結果、(1)漁村型集落の形態をもつ住宅密集地区の発生率が特に大きい、(2)漁村地区を除くと3つの規制値における不適格建築物発生率が相対的に高い地区が存在することが分かった。さらに、相対的に発生率の高い地区のフィールド調査を実施した結果、これらの地区の環境条件は計画的開発型、山村型、農村型の集住形態が見られた。すなわち、高建ぺい率・高容積率の建築行為と特定の集住形態との関係は小さく、別の要因であると考えられ、今後、(1)都市基盤、(2)立地特性、(3)世帯属性との相関を分析する。
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