1.昨年度の研究において、小学校区を基本とした37の地区に対して建築形態規制に基づく既存不適格建築物の発生率を算定し、クラスタ分析を行った。その結果、北九州市の市街化調整区域の環境条件として、漁村型、山村型、農村型、計画的開発型の4つに区分できた。本研究では、これらの4つの環境条件と既存建築物との関係を分析するため、8つの典型地区を抽出し、地区特性に応じた建築物規制の誘導方策を考察した。 2.8つの典型地区におけるフィールド調査を実施し、(1)都市基盤、(2)建築物及び敷地、(3)人口及び世帯の3つの分析を行った。その結果、環境条件に基づく既存建築物の空間規定要因として、地域レベルでは、(1)開発可能領域、(2)道路線形・幅員、敷地レベルでは、(3)区画形質、(4)空地形状、以上の4つの要因を指摘した。 3.開発可能領域が限定される地区では、建築形態規制によるコントロールには限界があり、区画形質に基づく建築更新と高度利用の誘導が必要であることを示した。さらに、漁村型と山村型の一部では、前面道路と隣地環境によって空地が不規則に分散していることを実証した。以上より、建築物規制に加えて、敷地コントロールの必要性を指摘し、連担空地の誘導方策を提案した。 4.特に、計画的開発型では既存不適格建築物の発生率が高く、基本的には建築形態規制の強化が必要とされるが、狭小な宅地では現状の規制下での住宅更新が困難となる。一方、開発可能領域が限定される地区が確認できることから、健全なコミュニティの維持のためには、区画規模の改善誘導が重要であることを明らかにした。以上のように、計画開発型は空間規定要因の複合的な判断に基づく建築誘導の指針を示した。
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