本年度は、主に(1)04年4月に学芸出版社から「オーダー・メイドの街づくり-パリの保全的刷新型『界隈プラン』」のタイトルで刊行予定の単行本の執筆と、(2)00年より施行された「都市連帯・再生法(Loi SRU : Loi relative a la Solidarite et au Renouvellement Urbains)」の既往研究の収集を主眼とした。 (1)は99年と00年のパリ市外局パリ都市計画アトリエ(APUR)での研修レポートを基にしているが、本科研費を得たことで本年度も現地調査を実施でき新たな知見を加味して書き下ろしたもので、300ページ程の刊行物である。また、本刊行物の執筆に先立ち、次ページの実績調書に記した2点の雑誌及び単行本に、一部をまとめつつそれぞれフォブール・サン・タントワンヌとシャン・ゼリゼの特別土地占用プランについての小論文をまとめた。ただ、「オーダー・メイドの街づくり」では、単なる事例紹介に留まらないよう、日本の都市計画に示唆的な課題に関しても分析を試みた。これは、結果的にだが現在国会で審議中の仮称景観法にも示唆が少なくないはずである。 (2)は本研究の発展課題として取り組んでいるものだが、ともかく大量の既往研究が発現しており、03年12月の現地調査の大半はその収集に追われた。しかし、これにも一定の目途を付けなくてはいかないと考えていたところへ、原田純孝東大教授から社会科学研究所リサーチ・ペーパーへの寄稿の話を頂き、90年代のパリ市の特別土地占用プランの都市連帯・再生法に対する先駆性を大まかに明らかにした。これは近日刊の予定である。
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