2004年度は、まずこれまで2年分の成果を「オーダー・メイドの街づくり-パリの保全的刷新型『界隈プラン』として出版した。これは、当初の研究計画に記した通り、1990年代にパリで進められた、土地占用プラン(POS)と協議整備区域(ZAC)の詳細化の問題の分析である。とりわけ、前者は小職がパリ市役所研究員時代に整理した諸計画が、時間を経て効果(或いは問題)を明らかにしつつあり、単なる計画論ではない論考仕上げることができたと考えている。また、ZACに関しては、拙著中で扱うには扱かったものの、さらに深い考察のため2004年度を通じても資料の読み込みを実施した。 さらに、かねてより土地占用プランの枠組みの中で実施されてきた眺望景観規制を我国の状況に敷衍し、建築学会での口頭発表や読売新聞の記事へのコメント発表を行っている。 一方、本年度最も時間を割いたのが、2000年の都市連帯・再生法で制定が決まった、土地占用プランにかわる地域都市計画プラン(PLU)の調査である。これには、(1)都市連帯・再生法と地域都市計画プランの仕組みの分析と、(2)地域都市計画プランの策定動向調査を基本とした。前者に関しては、自治体国際化協会のレポートとして発表することができ、我国の地方行政の現場へささやかな貢献ができた。また、後者に関しては、日経系の地域情報誌に2回に渡り、パリの地域都市計画プラン策定のためのアンケートの速報を出すことができた。 本研究は、本年度が助成の最終年だが、当初予定していた土地占用プランと協議整備区域の研究に関しては、満足ゆく結果を出し得たと自負している。しかし、2000年の法改正以降のフランスの都市計画の状況は流動的で、今後さらなる分析を進める方針である。
|