本年度は、前年度からの継続調査として特別養護老人ホームとグループホーム(新築建て替えによりユニット型に移行された特別養護老人ホーム/宮城県鳴瀬町「不老園」と、痴呆性高齢者グループホーム/石川県加賀市「いろり」)における調査を行った。 両施設において、ケアスタッフの介護の質的・量的な調査、および入居者の生活行動および空間利用に関する調査を行った。調査は行動観察調査により、スタッフの調査では午前5時から午後9時まで、調査日における全スタッフの1分間隔での記録調査、入居者の調査では午前7時から午後7時までの10分間隔での観察記録調査を中心とした。 前年度に行った調査の結果とあわせて考察することにより、異なる4つの形の高齢者居住施設における生活、介護、空間の相違を明らかにすることが出来た。さらには、従来型施設から新型施設への環境移行の状況を捉えることにより、環境と生活との関わりを明らかにすることが出来た。 特に4施設における比較考察からは、スタッフの数が介護の量的な相違を生み出すことはもとより、質的な大きな相違を生み出すこと、また空間構成の相違が介護の質的な相違に少なからぬ影響を与えていることなどが明らかになっている。入居者自身が持っている身体的な状況の如何に関わらず、生活する施設の違いによって「住まうかたち」の違いが現れてくる現状を、客観的に示し得た。 また、環境移行に関わる調査・考察からは、生活環境の変化、それに伴う介護環境の変化により、空間の利用形態など、行動観察調査から掴める要素においても入居者の生活に大きな変化をもたらされることが示された。また、生活行為に関しては、移行直後での調査ということもあり、大きな変化は見られなかった。今後の継続的な調査への課題も残した。
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