平成14年度は、関連する資料収集及び整理・検討が主な実施計画であったが、九州大学/竹下教授、(財)アイヌ民族博物館/山丸氏、同/村木氏、(財)アイヌ文化振興・研究推進機構/秋野氏、福岡市野村氏、自治体及び台湾逢甲大学/郭副教授、台湾山地文化園区/陳局長、韓国弘益大学校/韓教授等の協力を得て各種資料の収集を行い、現在資料の検討及びデータベース化を行っている。 本年度の研究経過報告として、以下の結果が得られた。 ・アイヌの世界観には、カムロ(神)が存在し、これに基づいて伝統的住居の配置に規則性があるのではないかとの仮説を得た。また、祭事では役割による配置・順序が明瞭であるが、室内での男女間の相違の有無についてはヒアリングによって相反する意見が得られ、今後その理由と実証に向けて充分検討しなければならない。また、地域によって住居を形成する屋内外の構成要素や方向性に相違があることから、立地特性等が密接に関係すると考えられる。 ・台湾原住民族の伝統的住居においては、相対的に見て山地原住民と海洋原住民とで相違がみられることが判明した。山地原住民は、太陽信仰により東側を上位とする規則性が窺えるが、島に居住する海洋原住民は、島周囲に集落を構えることにより、方位性が定まらない。しかし、対角線上に結ばれる集落や住居内に限定した方向性については、規則性が窺えること。(公開フォーラムYAMI文化研究の一世紀アジア太平洋のなかのYAMI文化2003年3月15・16日開催) ・韓国及び琉球地域においては、多くの風水研究が行われていることが判明した。それらの風水思想と伝統的集落及び住居がどのように対応するか、分析中である。 また、タイやベトナムの北部山間地に居住する少数民族には、男女・年齢・時間軸等によって居住空間を使い分ける例があり、調査地域の拡大も検討しなければならない。
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