3年計画の1年目にあたる本年度は、当初の研究目的・研究実施計画にも掲げたとおり、(1)江戸中期、(2)江戸後期-明治初期の建設資料・産業構造に重点をおいて研究を進めてきた。本年度実行した研究のうち発表済みの主要なものは後掲のとおりで、全体としては(1)明治初期の東京医学校の工事に関するもの、(2)江戸中期の江戸城の工事に関するもの、(3)江戸中期・江戸後期・明治初期の江戸東京における土木工事に関するもの、(4)上掲(1)-(3)も含め幕府棟梁に関するものからなっている。重要文化財旧東京医学校本館(東京大学総合研究博物館小石川分館)は国内有数の明治初期木造擬洋風建築遺構、東京大学現存最古の学校建築遺構として貴重なもので、この点も意識して本研究では明治初期の東京医学校の営繕体制に注目し、設計施工体制に関わる複数の新知見を得た。江戸城工事については、とくに注戸初期や江戸後期と比べて江戸中期の工事がほとんど研究されていない点を指摘し、工事手伝と幕府工事組織の関係を中心に論じた。江戸城工事の材木調達体制についても江戸後期の状況を江戸中期と比較検討した上でその相違を論じた。江戸東京における土木工事については、とくに江戸中期・江戸後期の橋梁工事体制、明治初期の上水・橋梁工事体制をめぐる動きに注目し、この点でも複数の新知見を得た。幕府棟梁については上掲のもののほか、明治初期における旧幕府棟梁・樋橋棟梁の動きを中心に論じた。以上のほか未発表のものは次年度以降に発表すべく準備を進めている。
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