3年計画の2年目に該当する本年度は、申請時の研究自的・実施計画・方法へも掲げておいたとおり、前年度の成果を踏まえつつ、(1)江戸中期と同程度まで、(2)江戸後期-明治初期の成果公表を底上げすることを目指し、その達成度を見た上で、(3)大正期-昭和初期を(1)(2)のレベルまで底上げすることへも比重を移しつつある。本年度の研究成果で既発表の主なものは後掲のとおりで、全体としては、(1)明治初期の工部省に関するもの、(2)明治初期の東京医学校の工事に関するもの、(3)大正・昭和初期の東京帝国大学の工事に関するもの、(4)明治東京の土木工事に関するものからなっている。明治初期の工部省が果たした役割は明治工業史研究の集大成である『明治工業史』(1927)をはじめ長期にわたる研究蓄積があるが、それらが再検討の余地を残していることを具体例に基づき指摘した。東京医学校の工事もその一つと位置づけられるもので、前年度に続き重要文化財旧東京医学校本館(東京大学総合研究博物館小石川分館)を中心に周辺の工事とも関連づけつつ研究を進めた。大正・昭和初期の東京帝国大学の工事は上述の(3)に該当するものである。同時期の米国フラー社の工事についても別に発表の機会を得ている。明治東京の土木工事はとくに道路工事や請負制度を中心に貴重な新知見を見出すことができた。新規史料の開拓は前年度に続き今年度も積極的に取組み、これも一定の成果を上げてきた。今年度中に発表の機会を得なかった内容は次年度へ向けて準備を進めつつある。
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