1)ヴァンブラの新古典主義的傾向をより明確にする為、レンとの比較を行った。双方が同じ議題についてそれぞれ対応する形で提案を行っている"Commission for Building Fifty New Churches"における教会建築の指針においては、教会が国家を讃えるモニュメントであるという点に重きを置くヴァンブラの姿勢と、より機能性や経済性といった実用的側面を強調するレンという対比を見て取ることができた。またヴァンブラの、モニュメントが朽ちて過去の記憶を想起させるというロマン主義的な捉え方も確認する事ができた。 2)現地調査:グロスターシャーのキングス・ウェストン・ハウスを訪問調査した。特にヴァンブラの初期のヴィラ建築として注目に値する建築作品であり、建築を管理する事業者からもヒアリングを行った。建築単体のみでならず周辺環境についても知見を得ることができた。またこれまで言及されることの少なかった領地内の建造物に関しても情報を得ることができた。 ケンブリッジシャーのキンボルトン・キャッスルを訪れ建物全体を視察した。この建造物は中世から増改築を重ねたものでヴァンブラも部分的に改築を行っている。増改築故、詳細が不明であったが現地調査である程度明らかにすることができた。城郭風の意匠が見られる最初の作品だが、その着想源について興味深い示唆を得た。 3)研究資料収集:ロンドンに所在するRIBA図書館、大英図書館、V&Aプリント・ルーム、コートールド・インステイテュートを訪れ、関連資料の収集とオリジナルの図面を閲覧した。出版物では読みとることの難しかった鉛筆によるメモや微細な図面への書き込み等を確認することができ研究に役立つ貴重な示唆を得ることができた。 4)以上の調査、予備的研究に基づきヴァンブラによるヴィラ建築の発展と城郭風意匠の展開に関する小論を現在まとめつつある。
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