平成15年度は前年に引き続き、円形闘技場遺構の「宗教施設化」をテーマとして研究を進めた。 1.調査研究対象 アンコーナの事例を中心とする、ウンブリナ、マルケ州における宗教施設化された円形闘技場遺構。 2.対象事例の実地調査および主要な事例の実測調査と図面作成 対象事例の実地調査を行うと共に、各種資料のカタログ化を行った。特に再利用の様態が特徴的なアンコーナ、テルニ、スポレートの事例に関しては、一部実測調査を行い、図的資料を作成した。 3.資料・文献の収集 対象事例に関する資料・文献を、現地関係者からのヒヤリングの他、各事例が存在する都市の主要図書館、および各地の考古学遺跡監督局・環境財建築文化財監督局にて収集した。 4.史料の収集 史料(中世後期〜19世紀)は各地の国立古文書館にて、特に都市建設に関する文書、議決書、都市とその周辺領域を描いた絵図、19世紀初頭の不動産登記台帳と地籍図等を、コピーもしくはマイクロフィルム撮影によって収集した。 5.VR技術による建築空間の記録と分析 遺構内の特徴的な空間(室内、外部等)をデジタルカメラと魚眼レンズで撮影し、画像データを専用ソフトで再構成し、上下左右360度回転可能なイメージを各事例毎に制作した。VRイメージの中から円形闘技場遺構のオリジナル要素(壁・柱・ヴォールト等)を抽出すると共に、後世に付加された要素を順に明確化し、遺構の変遷過程および再利用の手法を実証的に明らかにした。
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