様々な強磁性遷移金属/希土類金属(TM/RE)薄膜・多層膜を作製し、水素化・脱水素化に伴う構造・磁気特性変化を明らかにすることを目標として研究を進めた。以下に本年度の研究実績概要をまとめる。 (1)水素化・脱水素化による歪み場制御と金属薄膜・多層膜の構造変化 装置開発に重点を置いた。(1)現有のX線回折装置の真空チャンバーを改造し、新たに薄膜電気抵抗測定のための試料ホルダーを作製することで、水素雰囲気中で電気抵抗変化をその場測定しながら、X線回折測定のできるシステムの作製に取り組んだ。これにより、水素化・脱水素化に伴う薄膜・多層膜の構造変化を連続的に評価するシステムの作製に成功した。(2)Fe/La多層膜を用いて、水素化・脱水素化による電気抵抗変化・構造変化を評価した。真空引きによる脱水素化処理後に、多層膜の構造は完全に元に戻らないことが明らかにされた。 (2)水素化・脱水素化による歪み場制御と金属薄膜・多層膜の磁気特性変化 Fe/La、Co/LaおよびFe/Y薄膜・多層膜を作製し、水素化に伴う磁気特性変化の詳細を調べた。(1)Co/La多層膜では、水素化による飽和磁化の増加の原因について詳しく検討し、定量的説明を与えることができた。(2)Fe/Y多層膜では、この系で初めて見つかったAF結合の交換結合の定量的評価に成功した。
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