目的:本研究の目的はデジタル画像解析法を駆使した高精度の電子線ホログラフイー法を用いてナノスケールでの三次元螺旋構造における左螺旋か右螺旋かの判定手法を開発することである。 実験方法:使用した試料はシリカメソ多孔体の一種であるMCM-48を鋳型にして作製した三次元の螺旋構造を有するPtナノワイヤーネットワークである。超音波洗浄器を用いて粒径数百ナノのPt-MCM48粉末試料をエタノール中で分散させ、カーボンマイクログリッドの上に載せた。 実験装置はバイプリズムを搭載し、加速電圧300kVで電界放射型電子銃を備えた透過電子顕微鏡JEM-3000Fである。 実験結果:Pt-MCM48粉末試料を電子線ホログラフィーで観察した。三次元の構造を再構成するために、以下のようなステップで解析を進める。 1.電子線ホログラムを撮る。 電子線ホログラムには、位相情報が含まれている。 2.位相像(投影ポテンシャルの分布像)を得る。 電子線ホログラムをフーリェ変換して正しいサイドバンドの位置を決め、それを原点と見做して逆フーリェ変換することにより再生像を得、その位相情報を抽出する。これを「再生した位相像」という。 3.異なる方向へ投影したポテンシャルの分布像を得る。 Pt-MCM48試料を回転させて電子ビームの入射方向を少しづつ変えながら、複数の電子線ホログラムを撮影し、各入射方向の位相像を得る。 4.トモグラフィー的手法により三次元ポテンシャル分布を導出する。 5.三次元ポテンシャル分布から螺旋の左右を見分ける。 本年度(平成14年12月末まで)は1から3までの実験を行った。4および5の、多数の投影ポテンシャルから数値的に内部ポテンシャルの三次元分布の再構成を行うためのソフトウェア開発及び解析には至らなかった。
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