ルチル型酸化物は組成(AO_2:Aは主にVA-VIII族遷移金属)、構造(正方晶)が単純であり、かつ構成金属イオンAの種類により多彩な物性を示す。例えばTiO_2の光触媒、VO_2の金属絶縁体(MI)転移(T_<MI>=341K(68℃))、CrO_2の強磁性金属やSnO_2の透明伝導などが知られている。我々はこれらの物質を組み合わせ、新規物性・機能の発現や機能が何かに応用できないか、その可能性を探索する研究を行っている。本年度はVO_2とTiO_2を組み合わせた系(バルク体)においてスピノーダル分解が起こることを見出した。スピノーダル分解とは相分離過程において系全体に周期的な濃度揺らぎが自発的に生じる現象である。VO_2-TiO_2系ではこの分解が[001]方向に沿って起こり、その結果c軸方向にラメラ状の変調構造(V-rich相とTi-rich相の積層)がナノメータ周期で現れることを明らかにした。一種の自己組織化現象であり、特に異方的な点が特長である。 一方でルチル型酸化物の薄膜化も行った。レーザーアブレーション法により良質なVO_2薄膜をTiO_2基板上に作製することができた。基板からの格子歪の影響により、VO_2の金属絶縁体転移温度を70度Cから室温まで下げることに成功した。また基板にn型のTiO_2を用いて薄膜を作製すると、紫外光に反応して、膜に光伝導、光起電力が生じることを見出した。光による物性制御の方法を見つけた。
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