吸着剤への応用という観点で、遷移金属酸化物メソ多孔体の合成とその評価を行った。なお、合成方法としては、以下の二種類の方法を行なった。 A)遷移金属にバナジウムを用い、界面活性剤のミセルを利用してリン酸との複酸化物メソ構造体を直接合成する方法、B)遷移金属としてジルコニウムを用いて、層状リン酸ジルコニウムから層間のシリカピラリングによりメソ多孔体を合成する方法 これらの方法により合成した試料について、XRD、SEM、TEMを用いてその組織・構造を検討したところ、バナジウムを用いた場合はナノサイズの直径の一次元貫通孔がヘキサゴナル配列したメソ構造体となっており、ジルコニウムを用いた場合は層状構造が保たれていることが確認された。これらの試料について、熱処理、紫外線照射およびイオン交換法により界面活性剤を除去することで多孔化を試みたところ、バナジウムの場合は最大の比表面積36m^2/g程度、ジルコニウムの場合は218m^2/g程度の多孔化が達成された。さらに、これらの試料について、そのO_2とN_2の標準状態での吸着特性について検討した。その結果、バナジウム酸化物多孔体試料では、N_2吸着量はほぼ0でありO_2吸着量は3ml/gを超える値が観測され、非常に強い酸素吸着選択性を有することが確認された。一方、リン酸ジルコニウム多孔体試料では、O_2、N_2吸着量はほぼ同程度であり、酸素吸着選択性は確認できなかった。以上の結果から、遷移金属酸化物の種類や状態、さらにそのイオン価によりその吸着特性が大きく変化するという非常に興味深い結果が得られた。
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