本研究では、申請者がこれまで蓄積してきた研究成果を踏まえた上で、更なる発展を目指し、下記のような達成目標を掲げている:(1)粒界不純物拡散機構に対する分子動力学/電子状態解析;(2)ナノ構造中の粒界イオン・電子伝導の同時解析;(3)超長時間シミュレーション手法によるナノ粒子成長・粒界移動のダイナミクス解析。 上記の研究目的に沿い、それらを達成するための研究実施状況を以下に記す。 ・昨年度導入したPCクラスタ上でのO(N)-TBMD計算コード高効率化・並列化を行った。 ・ハイブリッド並列TBMD/MDコードを開発し、量子/古典のマルチスケール解析を開始。 ・昨年度に引き続き、古典MDとTBMDとの併用、ならびに上記のハイブリッドTBMD/MD手法を用いて、SiおよびSiC結晶粒界の高温における構造安定性の解析を行った。これまでの解析では、Siの場合はアモルファス粒界層厚が古典モデルと量子モデルとで多少異なるものの、高温下でアモルファス的に乱れた構造が常に出現する可能性があることを確認した。現在、SiC対応粒界の界面構造の熱的安定性を、上記の計算手法の系統的併用により詳細に調べている。 ・Si結晶および粒界中の水素原子の安定位置ならびに拡散のTBMDシミュレーションを実施し、結晶中の水素拡散経路ならびに対応粒界(Σ5)付近での水素原子の最安定位置を見出した。 ・原子のイオン性を考慮したSelf-consistentタイトバインディング(SC-TB)計算コード開発を実施。この手法を用いて鎖状ナノ構造Si中の電子伝導のダイナミックスを解析中である。
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