我々は、対向ターゲット式DCマグネトロンスパッタリング法を用いてn型酸化亜鉛-酸化インジウム系透明導電性酸化物薄膜の作製を行った。基板温度は150℃に統一した。基板に堆積させるZnOとIn_2O_3の比は、それぞれのターゲットに引加する電流値(I_<Zn>、I_<In>)により制御した。電流比δ=I_<Zn>/(I_<Zn>+I_<In>)と定義した。アニール処理は、H_2:N_2=4:96の混合ガスを用い、400℃、1時間行った。 アモルファス薄膜は0.20【less than or equal】δ【less than or equal】0.57の電流比領域で生成した。蛍光X線分析の結果、電流比は、ほぼ膜の組成比[Zn]/([In]+[Zn])に一致した。アニール処理によって、δ=0.20で作製した薄膜においてアモルファス相は崩壊し、酸化インジウムが析出した。このδ=0.20は、最もkの値の小さいホモロガス化合物であるZnIn_2O_4よりも酸化インジウム含有量が多いため、酸化インジウムがアニール処理によってしみ出す際にアモルファス相が崩壊したものと考えられる。アモルファス相が崩壊しなかった0.33【less than or equal】δ【less than or equal】0.57の薄膜試料について、アニール処理後キャリア濃度が2〜3倍になったものの、逆にキャリア移動度が減少して互いに相殺しあい、抵抗率はほとんど変化しなかった。このあたりの抵抗率が、酸素欠陥に代表されるnative donorの増加による抵抗率の改善では限界ではないかと思われる。アニール処理によってキャリア濃度が増加したことを反映し、アニール前に比ベアニール後では光学バンドギャップが大きくなり、伝導帯に存在するキャリア電子の光吸収・散乱により、全体的に可視光領域の透過率が若干低下した。アニール処理前後のδ=0.33の薄膜試料のSEM像およびAFM像を観察すると、アニール処理前のアモルファス薄膜は1000Å程度のスパイク状の粒子からなる凹凸のある膜であったが、アニール処理することにより非常にフラットな膜になっていることがわかった。
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