研究概要 |
対向ターゲット式DCスパッタリング装置を用いて作製した、ドーパントを有しない(1)酸化亜鉛-酸化インジウム系、(2)酸化亜鉛-酸化スズ系それぞれの透明導電性アモルファス酸化物薄膜の構造と導電特性について検討した。まず(1)の酸化亜鉛-酸化インジウム系アモルファス薄膜は、基本的にはホモロガス化合物Zn_kIn_2O_<k+3>(k=1,2,3)と同じ構造を有しているが、製膜時の基板温度が150℃以下と低いため、基板上に堆積した膜中で原子の再配列が起こらずアモルファスとして存在している。アモルファス薄膜では、インジウムの含有量が多いほどキャリア濃度が大きくなるが、キャリア移動度は組成にほとんど依存しないため抵抗率はインジウムの含有量が多いほど低くなった。アモルファス薄膜を還元雰囲気下400℃で1時間アニール処理すると、ZnIn_2O_4よりもインジウム含有量が大きい膜はアモルファス相が崩壊した。このアニールによって膜表面上の凹凸がなくなりこのアモルファス薄膜の実用化に向けて大きく前進した。次に(2)の酸化亜鉛-酸化スズ系アモルファス薄膜は、アモルファスそれぞれの組成に対応してイルメナイト型ZnSnO_3に近い構造を持つアモルファスから逆スピネル型Zn_2SnO_4に近い構造を持つアモルファスへと変化していることが示唆された。この場合、Snは基本的に6配位で変化しないが、Znは6配位から4および6配位と配位数の減少が起こり、これに伴ってキャリアの生成源である酸素欠損が減少していくため、酸化スズの含有量が多いほどキャリア濃度は大きくなり、抵抗率は低くなった。(1)・(2)のアモルファス薄膜とも、アモルファスの構造を保っている間は組成に依存せず比較的高いキャリア移動度を保っているが、これはSEM等の表面観察でもわかることであるが粒界が組織中た存在しないこと、導電経路と考えられる(1)の稜共有InO_6、(2)の稜共有SnO_6八面体のネットワークが、組成が変化しても大きく変わらないことに起因していると考えられる。
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