本課題では、電子構造およびフォトニックバンド構造エンジニアリングのために、ナノスケールの周期性とそれに重畳したサブミクロンスケールの周期性を併せ持つチタン酸バリウム自立膜の形成方法について研究することを目的としてきた。期間内において、我々がこれまでに見い出したヘテロ二金属アルコキシドBaTi(OMe)_4(OEt)(OEtOMe)の高濃度溶液を出発原料に用いる"高濃度ゾル-ゲル法"と界面活性剤を組み合わせた方法により、中空のチタン酸バリウム(BaTiO_3)単結晶がある種の周期的構造に自己集合した微細組織を形成にさせることに成功した。HRTEMを用いた解析により、粒径が約10〜15nmのBaTiO_3単結晶粒子には、中心にコントラストの違う約2nmの正方形に近い形状の部分があり、プラズモンロス像からとの部分が細孔であることを確認した。この細孔表面は(110)面による格子縞に対して45°の角度であることから、(100)面であることがわかった。10〜15nmの粒径の粒子全てに2nmの細孔が存在するとしても、その細孔の表面積が全表面積に占める割合はわずか約2〜7%程度であることから、窒素吸着等温線に現れる吸着ピークは微小なものになるはずである。窒素吸着等温線に現れた2nm付近の小さな吸着ピークがこの細孔に対応するものと考えられる。さらに、これらの中空BaTiO_3単結晶粒子がゲルネットワーク中で生成する過程で、界面活性剤の共存下でのみ、ある種の周期配列を取ることがわかった。X線小角散乱によれば、d=14nmに回折ピークが観察された。d値が中空BaTiO_3粒子の平均サイズにほぼ一致することから、これらの粒子が密に集合して周期構造を形成したものと考えられる。周期構造はゲル生成段階で界面活性剤が共存する場合にのみ生成したが、熱処理で界面活性剤を除去した後もその周期性を保持することがわかった。
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