遷移金属酸化物の光磁気機械機能のマグネトロンスパッタリング法によるデバイス化

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14750562
• 研究機関: 弓削商船高等専門学校
• 研究代表者: 柳沢 修実 弓削商船高等専門学校, 商船学科, 助手 (00332081)
• キーワード: 光・磁気・機械機能 / 超機能集積デバイス / プロブスカイト型酸化物 / Pr_<0.65>Ca_<0.35>MnO_3 / La_<0.5>Pr_<0.5>CrO_3 / 電子スピン共鳴 / 近赤外線レーザー / 光誘起磁性

研究概要

製膜条件の最適化
超機能集積デバイスへの応用をめざし、Pro_<0.65>Ca_<0.35>MnO_3粉末試料にて電子スピン共鳴(ESR)と粉末X線回折を用いて発見した特異な光照射効果の薄膜での実現のために、ターゲットとほぼ同組成かつ安価に製膜が可能なマグネトロンスパッタリング法による本物質の薄膜化を進めてきた。しかし、薄膜では製膜パラメータの違いによる酸素欠損や組成のずれ、サンプルと基板の格子不整合等により、電荷整列相の形成や光照射効果が抑圧され易い。そこで、基板と薄膜の格子定数の違いにより生じる応力効果、基板温度、蒸着雰囲気、膜厚の製膜条件の最適化を行った。その結果、基板はSrTiO_3、基板温度は850℃、蒸着雰囲気はアルゴン:酸素=1:1、膜厚は約8000Åの条件下で製膜を行ったところ、c軸配向した良質の薄膜が得られ、電気抵抗の温度依存性から光照射効果において重要な働きしている電荷整列相の出現が確認された。
新たな光機能性の創出
新たな光機能性の創出をめざし、高温超電導材料と同系のペロブスカイトやスピネル型結晶構造をとる酸化物の探索・合成を試みた。これまでの報告の中から、室温付近で磁気転移を示し、低温で磁極の反転を示す物質を探索して物質合成と近赤外線レーザー光照射下での磁性を系統的に調べた。その結果261Kに傾角反強磁性転移を示す、ペロブスカイト型酸化物La_<0.5>Pr_<0.5>CrO_3の多結晶体が、室温で非常に大きな光誘起磁性をもつことをESRから発見した(第23回低温物理学国際会議、'02年8月、広島にて発表)。本光誘起磁性は光照射に対して可逆である。さらに、本光敏感磁性は、LaとPrの組成に強く依存することを見出した(米材料学会講演会、'02年12月、米国ボストンにて発表)。本光誘起磁性は強磁性であり、単なる光によって励起されるキャリアよる現象ではないと考えている。本現象は近赤外線光照射のオン・オフに対して、常磁性・強磁性や構造伸縮のスイッチが可能な可能性があり、新規な超機能集積デバイスへの応用が期待できる。

研究成果

• [文献書誌] M.Arai, T.Nakayama, O.Yanagisawa, M.Izumi: "Structure and electromagnetic properties in thin films of Pro_<0.65>Ca_<0.35>MnO_3"
• [文献書誌] T.Nakayama, O.Yanagisawa, M.Arai, M.Izumi: "Photo-induced effect on the electron spin resonance in La_<0.5>Pr_<0.5>CrO_3"
• [文献書誌] M.Arai, T.Odagiri, O.Yanagisawa, M.Izumi: "Photo-Induced Magnetism in La_<0.5>Pr_<0.5>CrO_3"J. Solid State Electronics.
• [文献書誌] O.Yanagisawa, M.Arai, T.Odagiri, T.Nakayama, M.Izumi: "Photo-Induced Magnetism in La_<0.5>Pr_<0.5>CrO_3 with Canted Antiferromagnetic Spin Order Studied by Electron Spin Resonance"Memoirs of Yuge National College of Maritime Technology. Vol.25. 01 (2003)
• [文献書誌] O.Yanagisawa, M.Arai, T.Odagiri, T.Nakayama, M.Izumi: "Charge-Ordered State in Pr_<0.65>Ca_<0.35>MnO_3 Thin Film Deposited by the Magnetron Sputtering"Memoirs of Yuge National College of Maritime Technology. Vol.25. 09 (2003)