1.ラム波伝播速度を用いた直交積層板におけるトランスバースクラック密度および層間剥離長さの定量評価 (1)直交積層板におけるトランスバースクラック密度とラム波伝播速度との関係をシアラグ解析と古典プレート理論により導出し、実験的検証を行った。実験においては直交積層CFRPおよびGFRP製の引張り試験片に人工欠陥を与え、任意のトランスバースクラック数を引張り試験機を用いて導入した。その後、超音波パルサー、AEセンサおよびデジタルオシロスコープを用いてラム波伝播速度を測定することにより、実験的にトランスバースクラック密度とラム波伝播速度変化率との関係を得た。その結果、理論値と実験値は非常によい一致を示し、ラム波伝播速度を用いたトランスバースクラック密度の定量評価手法を新たに開発した。 (2)ラム波が直交積層板の層間剥離部で分離して伝播することを利用し、層間剥離長さとラム波伝播速度との関係を定式化し、実験的検証を行った。テフロンシートを用いた任意長さの擬似層間剥離を有する直交積層CFRPおよびGFRPを作製し、ラム波伝播速度を測定した。その結果、理論値と実験値は非常によい一致を示し、ラム波伝播速度を測定することで、層間剥離長さを定量評価する手法を新たに開発した。 2.ラム波伝播速度変化を考慮に入れたトランスバースクラックのAE位置標定 直交積層CFRPおよびGFRPの引張り試験の際にAE計測、in-situ側面観察を併用して行い、トランスバースクラックとAE信号との一対一対応を行った。位置標定手法としては任意のトランスバースクラック数に対するラム波伝播速度を計算し、in-situ伝播速度を用いたAE位置標定を世界で初めて行った。in-situ観察により得られたクラック位置とAE位置標定との比較を行った結果、従来法に比較して、著しい位置標定精度の向上を達成することができた。
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