本研究は、シリコンを微小なサイズをもつ導波路に形づくることにより、シリコンの新たな機能を創出することを目的としている。具体的には、(サブ)ミクロンオーダーの断面サイズをもつ光導波路にシリコンをかたちづくり、微小な1次元構造をもつことによるシリコンの赤外領域における特性の変化を明らかにしていく。初年度の今年度は、シリコン光導波路の作製条件を確立し、シリコン光導波路のラマン散乱など、光学測定のための光学システムを構築した。 シリコン光導波路の作製には、基板にシリコンエピタキシャルウェハーを用いた。PドープN形シリコン(100)基板上にシリコンエピタキシャル層が10μm堆積したものである。キャリア密度はエピタキシャル層が10^<14>オーダー、基板が10^<18>オーダーである。<110>方向にストライプをもつマスクパターンをリソグラフィーにより作製したのち、PCl_3ガス雰囲気下(0.02Torr)において反応性イオンエッチングによりシリコンエピタキシャル層のみを基板までエッチングした。基板に比べて大きな屈折率をもつ(キャリア密度が小さい)シリコンエピタキシャル層が光導波路となる。導波路の幅としては6.2および9.8μmのものを作製した。ミクロンサイズのシリコン導波路を作製する装置の構築と条件を確立した。 さらに、上記のように作製したシリコン導波路のラマンスペクトルおよび導波路を透過する光の損失率を測定するための光学系を構築した。励起光の波長を1μmおよび1.5μmとする2つのシステムを構築した。それぞれのシステムの有効性を確認するため、GaP-AlGaP導波路による誘導ラマン散乱に基づく光増幅測定を行った。
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