本研究は微小なサイズを有するシリコンの光学的特性を明らかにするため、以下に挙げる4つの項目ついて、シリコン中の光導波に関する研究を行った。シリコン光導波路はシリコンエピタキシャルウェハーを基板として用いて、エピタキシャル層を導波路とした。屈折率に対するキャリア密度の負の効果を利用する方法であり、SOI (Silicon on Insulator)基板と同様に高い導波効果が期待されるものである。 (1)シリコン光導波路作製技術の開発 (2)1.5μm帯域における光導波路評価のための光学システムの構築 (3)誘導ラマン効果に基づくシリコンラマンスペクトルの測定 (4)シリコン導波路における光損失の評価 シリコン光導波路は、Pドープn型Si(100)基板上におけるエピタキシャル層を導波路として用いた。キャリア密度は基板が10^<18>オーダー、エピタキシャル層が10^<14>オーダーである。基板上にマスクパターンをストライプが<110>方向となるように作製し、PCl_3ガスによる反応性イオンエッチングを行い、シリコン光導波路を作製した。断面サイズとして膜厚10μm、幅として6.2μmおよび9.8μmの導波路を作製した。光導波路評価のため1.5μm帯の光学システムを構築し、従来から研究を行っているGaP-AlGaP導波路を用いて光学システムの有用性に関する確認を行った。15μmレーザダイオードを信号光源としてシリコンの誘導ラマンスペクトルを測定した。520cm^<-1>付近におけるシリコンの光学フォノン(LO+TO)によるバンドに注目し、光増幅において基礎データとなるラマン選択則について、それぞれ結晶方向([100]、[110]、[11^^-2])における励起光源偏光依存性を検討した。また、スラブ型シリコン導波路(導波路長:10mm)を用いてシリコン導波路における光導波特性についての評価を行った。導波路膜厚の減少に伴い、導波路における光損失率が低下する傾向は光導波効果を反映した結果であると考えている。
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