アンビル式高圧装置を用いて、高い水素含有量の新規水素化物を合成することを本研究の目的とした。軽量であるMgをベースとし、希土類元素および遷移金属元素を組み合わせることにより新規水素化物が合成可能であるか検討し、得られた新規水素化物の結晶構造、水素含有量および熱的安定性を調査した。 Mg-希土類元素系ではMg-Sc、Mg-La、Mg-Ce、Mg-PrおよびMg-Nd系について新規水素化物の探索を行なった。その結果、MgH_2-xmol%LaH_3、MgH_2-xmol%CeH_<2.5>、MgH_2-xmol%PrH_3においてx=25~33付近に新規水素化物相が出現した。また、この水素化物相はMg-La系およびMg-Ce系においては3GPa以上、Mg-Pr系では5GPa以上において出現した。これらの相はいずれも正方晶系の単位格子を有しており、約600Kで吸熱を伴う水素解離が生じ、Mgと希土類水素化物に分解することが判明した。また、x=25においてMg-La、Mg-CeおよびMg-Pr系はそれぞれ4.1mass%、3.7mass%および3.9mass%の水素を含有することが明らかになった。一方、Mg-ScおよびMg-Nd系については本研究にて用いた高圧装置の限界圧力6GPaまででは原料および高圧下で形成されるY-MgH_2のみが出現し、新規水素化物の合成は確認されなかった。 上記の通り、モル量あたりの水素含有量H/Mが4を超える化合物の合成には至らなかったが、2年の研究期間の間で4つもの新規化合物が合成され、今後の更なる進展が十分に期待される結果を得た。
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