有機高分子基板として用いられるポリイミドフィルムへの銅めっきの密着性の向上を目的として、表面処理による吸着点の性質の変化を検討した。酸あるいはアルカリ処理を施したフィルムの表面の赤外吸収スペクトル、AFM測定を行った。また、処理したフィルムを性質の異なる色素の水溶液、アルコール溶液に浸漬し一定時間毎にフィルムの可視吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトル測定よりアルカリ処理によってイミド基は加水分解し、アミド基が生成することがわかった。ポリイミドの種類の違いにより耐酸性、耐アルカリ性の性質は大きく異なった。ユーピレックスは耐薬品性に優れているため、カプトンと比較し表面処理が困難であった。AFM測定よりフィルムの表裏では面粗さが異なり、酸・アルカリ処理によって面粗さは一旦大きく減少した。酸処理では直径約20nmの突起物を残すように微細な凹凸が成長した。表面形態変化と無電解めっきの良否と単純に関係付けることは困難であった。吸着点は酸性であるため水溶液中ではアミド酸イオンと結合する塩基性の色素の吸着が大きかった。 ポリイミドフィルムの構成単位と銅あるいは銅イオンとの錯体について構造最適化と錯体形成エネルギーを計算した。AM1法を用いた半経験分子軌道計算からイミド、アミド酸、アミド酸イオンの順で銅イオンとの結合力が大きくなることがわかった。また、銅中性種よりイオン種の方が結合力は大きかった。実験と比較して吸着点の性質は酸性であり、酸性基の形成を制御することが次の課題と考えられる。
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