今年度は昨年度結果より、ポリイミドの吸着性について形状による影響ではなく、化学的な官能基変化による影響を調べた。主に非経験的分子軌道法計算を用い、相互作用エネルギーを求め相互作用による電子分布の変化について検討した。Ab initio量子化学計算は今回はじめてであるため異なった2つの小さい系で計算手法・処理を学んだ。 1.ホスゲン-水錯体系(発表論文1) ホスゲンと水とのファンデルワールス錯体について2つの安定構造が見つかり、最安定構造はホスゲンの水素置換体であるホルムアルデヒド-水錯体の構造とは大きく異なり2分子間の相互作用には分散力の効果が大きいことがわかった。電子相関の取り扱いによって相互作用エネルギー、分子間距離がどのように変化するかHartree-Fock法、DFT法、Moller-Plesset法を用いて比較した 2.シクロプロパノン-ハロゲン化水素(HF、HCl)錯体系(発表論文2) シクロブロパノンとハロゲン化水素錯体についてHF、HClとも2つの安定構造が見つかった。1の系より相互作用エネルギーは大きい。HFとHClでは双極子モーメントの大きいHFのほうが相互作用エネルギーの大きいことがわかった。 1、2より相互作用の弱い系では基底関数の大きさ、分極関数、diffuse関数の影響が大きくあらわれることがわかった。また、分子の配向もDFTとMP2で異なる場合があることがわかった。 3.本課題の対象分子としてポリオミドのカプトンHの構成単位イミドとCu^+、そのイミドが加水分解したアミド酸とCu^+の系について構造最適化、振動解析を行った。相互作用エネルギーはMP2レベルで1、2の系と比較しアミド-Cu^+系では10-20倍大きく-60〜-70kcal mol^<-1>が得られた。3については発表論文準備中である。
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