本研究計画の最終年度である本年度は、前年度において得られた成果をもとに、磁性ナノ粒子分散ポリイミド薄膜の微細構造制御および磁気特性と構造の相関について検討した。前年度においては、薄膜の厚みは水酸化カリウム水溶液の濃度、時間および改質時の温度を変化させることによって任意に制御できることが明らかとなっており、本年度は主にナノ粒子サイズおよび体積充填率の制御に関する検討を行った。その結果、ニッケルイオンをドープしたポリイミド樹脂を200〜300度において水素雰囲気下にて熱処理を施すと、熱処理時間の増大に伴いニッケルナノ粒子の触媒作用によりマトリックス樹脂が分解収縮することを新たに見いだした。さらに収縮の際にナノ粒子サイズは変化しないことが明らかとなっており、サイズは熱処理温度、体積充填率は熱処理時間により連続的に制御可能であることがわかった。以上の結果により、本研究計画の目的である微細構造制御について、磁性ナノ粒子分散薄膜の微細構造パラメーター(膜厚、粒子サイズおよび体積充填率)をそれぞれ独立にかつ精度良く制御することに成功した。 以上の知見をもとに、本年度はさらに微細構造を制御した薄膜の磁気特性に関して検討し、微細構造と磁気物性の相関について検討した。ナノ粒子間の磁気的相互作用を解析するのに極めて有効な評価法である強磁性共鳴シグナルについ検討したところ、磁気共鳴ピークは薄膜の体積充填率に依存して連続的にシフトした。これは粒子間の磁気的相互作用の変化をとらえた世界的にも初めての結果であり、今後磁気記録材料をはじめとする記録デバイスの構築に関するモデルサンプルとして今後の用途展開が期待される。 以上の成果は国内および国際学会にて発表を行い、微細構造制御に関してまとめた論文をEuropean Physical Journal D誌に公表した。
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