半導体製造プロセスを駆使し微細流路を形成し、微量試料溶液からの微量成分分析を行うマイクロ流体デバイスの創製を目的に、シリコンの極微細深溝加工法の確立、その側壁の平坦化技術の確立を行った。Si深溝加工法は、誘導結合プラズマ反応装置にて、マスク保護膜形成と、エッチングを繰り返して溝加工を行うBosch法を改良して行った。このプロセスでは、内壁に百nm程度の凹凸(リップル)が、形成される。リップル構造は、絶縁破壊を引き起こす原因となるため、反応性プラズマエッチングにより内壁の平坦化を行った。裏面から電界を印加することで酸化膜の表面電位を変化させることを目的として、水蒸気熱酸化法によりSiO_2膜を形成した。最終的に、幅1μm、深さ20μm、アスペクト比20の深溝流路の形成が可能となった。 溝両端から電界を印加した場合の電流-電圧特性(I-V)、および裏面に電圧を印加した場合のI-Vを測定し、電界効果による特性の違いを検討することを試みた。まず溝両端から電圧を印加した場合、系を流れる電流値はSi深溝の幅による変化に比べ、試料溶液のpHに大きく依存するという結果が得られた。溝幅1μm、3μm、10μmの流路を流れる電流は、pH4.0の溶液では、溝幅の増大に伴い単調に増加した。しかし、pH7.4の溶液では、溝幅の狭い流路ほど、電流値が大きい結果となった。流路内壁SiO_2のゼータ電位は、pH7.4の場合、-60mV、pH4.0はほぼゼロである。従って、pH7.4の溶液では、ゼータ電位が大きいため、電気浸透によるイオン移動が支配的に、また、pH4.0の溶液では、ゼータ電位がほぼゼロのため、電気泳動によるイオン移動が支配的になったためと考察される。 裏面からの電圧印加によるI-V特性については、酸化膜の均質性が悪く、測定中絶縁破壊が起こり測定不能であった。今後、耐圧の良い絶縁膜を作製し、極微細(ナノ構造)流路内の特性評価を行う予定である。
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