研究概要 |
高性能プラズマ溶射遮熱コーティング(TBC)システムの設計・開発に向け,最適コーティングプロセシングに基づくシステム設計の最適化が不可欠である.近年,TBCシステムの損傷支配因子としてトップコート(TC)/ボンドコート(BC)界面に発達する酸化物(TGO)層が注目されており,TC/BC界面を中心としたコーティング性状の適切な制御が重要である.本年度の研究では,コーティング性状を系統的に変化させたTBCシステムのTC/BC界面を中心にTEM等によるナノキャラクタリゼーションを実施し,界面性状に及ぼす各種パラメータの影響を検討するとともに,TGO層厚さの合理的計測方法を考案し,TGO層の生長挙動を定量的に検討した. 【主な研究成果】(1)大気中熱処理で形成されるTGO層は不連続かつ不均質で,BC直上に多数の粒界を有する柱状晶Al_2O_3層と,この上に多成分系複合酸化物の微細等軸晶層の2層から構成される.これら酸化物相の粒界は各種イオンの容易拡散経路となり,TGO層の成長速度を高める一因になるものと考えられる.さらに,このようなTGO層の成長は,TCのはく離を誘発する巨視き裂の発生源になる危険性がある.(2)Arガス中熱処理過程で生長したTGO層は,連続的で粒界の少ない単層のAl_2O_3層から構成され,主に粒内拡散によってAl_2O_3層が成長する可能性が示唆される.それゆえ,このように欠陥の少ないAl_2O_3主体の健全なTGO層は,環境成分の内部侵入に対して抑止効果をもつ耐環境性バリアとして十分期待できる.(3)TGO層の不均質性を考慮した厚さデータの統計的処理に基づいてTGO層の生長挙動を定量的に評価した.その結果,TC溶射条件もTGOの生長挙動に深く関与しており,TGO生長挙動を制御するうえで後熱処理プロセス条件の適正化の重要性が明らかとなった.
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