研究概要 |
高性能プラズマ溶射遮熱コーティング(TBC)システムの設計・開発に向け,コーティングプロセシングの高度化に基づく微構造制御を通してシステム設計の最適化を図ることが重要である. 本研究は,昨年度の研究成果を踏まえ,種々のコーティングパラメータを系統的に変化させた数種類のTBCシステムを対象として1000,1100℃で等温酸化試験および熱サイクル試験を実施し,コーティングプロセシングに依存するコーティング微構造や界面性状などのコーティング特性と関連づけてTBCシステムの高温耐久性を評価した. その結果,高温酸化特性は,トップコート粉末の種類と溶射後の熱処理温度や雰囲気を組み合わせた後熱処理条件に強く依存することを明らかにした.すなわち,中空造粒粉で作製した多数の微視気孔や微視き裂を有するトップコート性状は,溶融粉砕粉から成る微視的欠陥をほとんど含まないトップコートに比べて,優れたトップコートはく離抵抗を示す.これはトップコート中に先在する微視欠陥に起因した熱応力緩和効果のためである.また溶融粉砕粉を近接溶射させて作製したセグメント化トップコートは,トップコートのはく離抑制に大変有効であることを明らかにした.さらに昨年度の研究で見出したArガス雰囲気中での適切な後熱処理によってトップコート/ボンドコート界面に発達させた純粋なAl_2O_3連続層から成る酸化物(TGO)層が,熱的に安定で成長速度が遅く,TBCシステムの高温酸化特性改善に向けて極めて効果的であることを実証した.これに対して大気中高温下での後熱処理は,多数のボイドを有する不均質TGO層の発達を助長し,溶融粉砕粉で作製した緻密なトップコートを有するTBCシステムでは早期トップコートはく離を誘発する危険性が極めて高いことを指摘した.
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