研究概要 |
植物プランクトンの増殖にはさまざまな塩類や元素が必要であり、それらの成分がバランスよく海水に溶存しているときに、植物プランクトンの増殖効率は高くなる。大部分の種類の海洋植物プランクトンは、単細胞とみなせ、夏場などの好気象条件下では、一日で1,2回細胞分裂を起こし、極めて早く増殖するのが特徴である。そのときプランクトンが体内に取り込む栄養素は、元素比でFe:P:Si:N:C:O=0.001:1:15:16:106:212(Redfield's ratio)である。すなわち、鉄を海水中に1モル供給し、これを全てプランクトン増殖に利用できたとすると、その体内にCO_2を106000モル吸収できることになる。しかし、実際の海洋においては、海域により、増殖のために必要な栄養元素が極端に不足しており、それらの貧栄養素の供給が律速となり、増殖するのが困難となっている。 プランクトンの成長・増殖を促進させるために有用成分を海水中へ加える際には、海水への各元素の添加技術が重要課題となる。本研究では、鉄鋼スラグからの栄養成分溶出挙動およびメカニズムを解明し、海水中の栄養元素が適正な濃度比で存在させるような技術開発をおこなう。また、製鋼スラグから有害元素が溶出しないような安定化技術の開発を行う。 複合結晶相からの海水中への成分溶出試験 平成16年度は、複合結晶相を人工的に合成し、人工海水中への溶出試験を行った。海水中有害元素濃度およびpHの経時変化を測定し、海水中への成分溶出速度および飽和溶解度を測定した。また、複数の結晶相がスラグ中に存在した条件での、有害元素の溶解挙動を明らかにした。
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