研究概要 |
本最終年度ではアルカリ土類、亜鉛リン酸塩系ガラス融体(50RO-50P_2O_5, R=Mg,Ca,Sr,Ba,Zn)の密度,表面張力を精度よく測定し、組成依存性、温度依存性を明らかにすることを目的とした。 密度はアルキメデス二球法を用いて測定した。表面張力はリング引き上げ法を用いて測定した。測定温度は状態図の液相線温度以上である800℃から1200℃の温度域において測定した。測定誤差はそれぞれ1%以内であった。全組成において密度は温度の上昇と共に減少した(2.3〜3.4g/cm^3)。密度の大きさはBa>Sr>Zn>Ca>Mgの順に大きな値を示した。イオン充填率はBa,Sr,Ca系では42〜45%を示したのに対し、Mg,Zn系は39〜40%の値を示した。すなわちイオン半径の小さいイオンほど、充填率は小さく、Mg,Zn系の酸素配位状態がBa,Sr,Ca系と比較して異なるためであると推測された。 表面張力はSr>Ca>Mg>Ba>Znの順に大きな値を示した(220〜258x10^<-3>N/m)。表面張力温度係数は全ての系において負の値を示し、Mg>Zn>Ca>Sr>Baの順に大きくなった。表面張力温度係数は陽イオン電場強度(Z/r^2,Z:電荷,r:イオン半径)が大きくなると共に大きくなる傾向を示した。その中でもBa,Sr,Ca系とMg,Zn系のカチオン場強度に対する表面張力温度係数が異なることから、それぞれガラス融体構造がそれぞれ異なるものと推察された。これらの相違は分光学的手法による構造解析結果より、Mg,Zn系の陽イオン酸素配位数が4と他の陽イオンと比較して小さく、リン酸塩ガラス構造の一部に網目として組み込まれている可能性があることを実験的に明らかにした。 本研究成果を基に、鉛含有ホウケイ酸塩ガラスの粘度,密度、表面張力データとの比較を行い、これらの融体と同等の物性を有する鉛フリーリン酸塩ガラスの探索を行った。
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