研究概要 |
ナノメートルからマイクロメートル領域における蒸気中の付着現象について,固体表面の不均質性,凹凸度,変形性に注目ながら,付着機構の解明を目指して研究を行った。具体的には,(1)シミュレーション手法(モンテカルロ法,格子ボルツマン法)を駆使して理想実験系を解析する,(2)原子間力顕微鏡により探針・基板間の相互作用力を測定する,という二本柱で研究を進めた。 蒸気中での剛体ナノ粒子・変形性壁面間の相互作用力について,モンテカルロ法に基づく分子シミュレーション解析を行った。その結果,粒子が壁面に対して4〜5蒸気分子程度まで近づくと粒子・壁面間には液架橋が生じて引力が働き,さらに2分子以下にまで近づくと正味の液架橋力は失われ直接相互作用が支配的となる,ことを明らかにした。また,粒子・壁面間距離の変化に伴い,壁面構造の変化が観測された。 分子シミュレーションでは追跡することのできない時空間オーダの現象を解析するため,最近開発された気液二相系格子ボルツマン法を修正し,不均質性表面や凹凸表面の固体を取り扱えるようにした。本手法に基づくシミュレーション解析を行い,濡れ挙動に及ぼす物理的・化学的不均一性の影響を明らかにした。また,種々の表面物性を持つ二粒子間の横毛管力の解析にも成功した。 原子間力顕微鏡に温度制御型サンプルステージと環境制御ユニットとを付加し,湿り空気中で探針・マイカ板面間の相互作用力測定を行った。その結果,温度制御型ステージでは観測部分という局所的な温度しか制御できないため,外気と観測部分とに温度勾配が生じ,これが相互作用力測定に悪影響を及ぼしていることがわかった。そこで,サンプルステージによる局部的な温度制御と同時に,インキュベータ中に原子間力顕微鏡本体を入れることによる外気の温度制御を行った。本手法により,再現性と精度の良い相互作用力測定が可能になった。
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