研究概要 |
ナノメートルからマイクロメートル領域における蒸気中の付着現象の解明を目指して研究を行った。具体的には,(1)シミュレーション手法(モンテカルロ法,格子ボルツマン法)を駆使して理想実験系を解析する,(2)原子間力顕微鏡によりコロイドプローブ・基板間の相互作用力を測定する,という二本柱で研究を進めた。 モンテカルロ法に基づく分子シミュレーション解析により,蒸気中での剛体ナノ粒子間の相互作用力へ及ぼす固体表面構造の影響を検討した。その結果,構造を有する表面間の相互作用力曲線は,無構造表面間のものとは,ごく近距離で異なる挙動を示した。 分子シミュレーションでは追跡することのできないマイクロメートルオーダの現象を解析するため,最近開発された気液二相系格子ボルツマン法を発展させた。その結果,種々の表面物性を持つ二粒子間の毛管力のシミュレーション解析に成功した。本手法は,局所密度・圧力の静的情報ばかりでなく,流体力学的効果も含んだ情報をも与えてくれるため,従来のYoung-Laplace式に基づく解析よりもはるかに適用範囲が広いといえよう。 原子間力顕微鏡に環境制御ユニットとを付加し,湿り窒素ガス中でのカーボン粒子(粒径約6μm)・グラファイト板面間の付着力を測定した。水蒸気中の付着力は相対蒸気圧に依存せずに一定値を示したが,エタノール蒸気中の付着力は相対蒸気圧と共に増加することを観測した。これらの結果は,Young-Laplace式に基づく単純な理論計算で,見かけ上,説明できた。
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