本年度は、溶媒乾燥速度の電気的計測と、相分離過程の観察とを同時に可能とする新しい評価装置の開発を主として行った。前者については、冷却面への溶媒凝縮による熱流束の変化を、ペルチェ素子内を流れる電流値として計測する手法を検討した。まず素子特性の検定を行い、熱流束と電流値の間に直線関係が成立することを確認した。ついで、素子下面温度を精度±0.1Kで制御し、熱流束の計測を行ったところ、乾燥条件に対応する安定した電流値の出力が得られることがわかった。従って、本研究で提案した電気的手法によって乾燥速度の計測が可能であることが明らかとなった。 後者の相分離過程の観察については、本研究費で購入したマイクロCCDスコープを用いて、倍率50×から3000×で行った。ポリスチレン・ポリカーボネート・テトラヒドロフラン溶液を、透明加熱板上で乾燥させ、透明加熱板を通して装置下部から薄膜構造の時間変化を観察した。その結果、1次相分離によって生じたポリカーボネート相が合一を繰り返し、直径約30μmの液滴状構造を発現することがわかった。この液滴構造は薄膜の2次元平面内に周期的に分布しており、対流淀み点に分離相が集積されたことが示唆された。更に乾燥が進行すると、この相間に直径6μmの新たな2次液滴相構造が発生し、相直径は明らかにバイモーダルな分布を示すことが明らかとなった。これらの結果から、本評価装置を用いて、乾燥速度の計測と相分離構造の可視化の双方が可能であり、新しい構造評価デバイスとして利用可能であることがわかった。
|