研究概要 |
本研究のテーマは水溶液からの疎水性化合物の結晶化とそれを利用した自己組織化操作の開発である. これまでの進展として, 1)水溶液中の希薄溶解度の液液,固液の相平衡の決定 2)それらの溶解度を利用した新しい結晶化分離操作の開発 3)液液相互溶解度と固体溶解度の共存とOstwald Ripening現象の発現 4)分子シミュレーションによる液液クラスターと結晶クラスターの違い 以上の項目について成果があげられ公表してきた.これらの内容の本質的に重要なことは,疎水性化合物の希薄溶解度の特性にある. 本年度の課題であった液液溶解度や固体溶解度が複雑に存在する領域の結晶化操作について, a)乳化->結晶化プロセス(不均一核化現象) b)直接結晶化プロセス(不均一核化現象) の2つのプロセスについての実験を行い,ナノメータサイズ粒子の粒度をDLS(Dynamic light scattering)で測定した. 結果として,乳化->結晶化プロセスでは結晶粒子が比較的大きく,500nmの平均粒径でエタノール濃度や冷却温度に影響されないこと,直接結晶化プロセスでは結晶粒子が比較的小さく,30nm-150nmの範囲で平均粒径が変化し,エタノール濃度が高くなると,冷却温度が高くなると平均粒径が大きくなることが分かった.直接結晶化プロセスでは,結晶核の生成で成長がないものと考えられた.また,乳化した疎水性化合物に富むエマルジョン(液液クラスタ)は不安定で,結晶化しないことを熱力学的に明らかにした.
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