本研究では、水中に微量溶解することで人体に悪影響を与える懸念がある環境ホルモンなどの有害な有機物を除去できる、新しい吸着剤の合成を目指した。吸着剤を利用するプロセスにおいてコストを低く抑えるには、簡便な操作で吸着剤の再生が行えることが望ましい。そこで本研究では、わずかな温度差で体積/重量変化し親水性/疎水性変化する熱感受性ポリマーを環境ホルモンの吸着担体として利用することを日指した。下限臨界溶液温度(LCST)を有する熱感受性ポリマーを架橋することで、容易に熱感受性ハイドロゲルが合成できる。そこでアクリルアミド誘導体より熱感受性ゲルを合成し、温度変化に応答してゲルが体積変化するプロセスの動力学的解析を行った。吸着剤としての性能を向上させるには温度変化に敏感に応答することが望ましい。そのため本研究では、熱感受性ゲルの熱応答速度とゲルの構造との相関を考察した。同じ大きさのゲルを用いた場合でも、ゲルの多孔質化の状態(孔径・膜厚)を制御することで収縮速度を数千倍の広い範囲でコントロールできることを示した。更に、この熱感受性ゲルに環境ホルモン分子吸着部位としてシクロデキストリンを固定化した熱応答性シクロデキストリンゲルの合成条件を詳細に検討し、合成されたゲルの物性を評価した。水中に溶解する環境ホルモンの例としてビスフェノールAなどを用い、このゲルへのビスフェノールAの吸着過程を検討したところ、今回合成したゲルは熱応答性・ビスフェノールAの吸着性能を兼ね備えていることを明らかにした。ビスフェノールA吸着量の温度依存性を吸着等温式を用いて定量的に解析し、ゲルへの環境ホルモン分子の吸着機構を考察し吸着剤の高性能化への指針を得た。
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