研究概要 |
本研究では,炭素電極を使用して液中でアーク放電を起こすことにより炭素系ナノ粒子合成を行う方法を開発している。液体は高温アーク放電により生成したカーボン蒸気を急速に冷却する効果とアーク放電場にガス成分を供給する役割を持っている。反応系の制御パラメータとして,水を使用したときの圧力および液の種類を変えた実験を行った。圧力の影響として,500torrまで減圧して合成を行うと,平均粒子径が大きくなり,粒子の結晶性が高くなることが分かった。理由として,圧力を減少させることにより液中アークにおける気泡の発展速度が増加し,平均気泡径が大きくなって急冷速度が抑制されるからであると考えられる。水を液体窒素に変えて実験を行うと,水中アーク放電では生成しなかった単層カーボンナノホーンが生成した。さらに,陽極にNiを含有した実験を行うと,Ni内包のカーボンナノホーンや単層カーボンナノチューブが生成した。これらの単層カーボンナノ構造は単純な水中アーク放電では生成しない構造である。これらの単層構造を低コストで連続製造するための検討として,不活性ガスを水中アーク放電場に導入する方法を考案した。結果として,水を使用しても液体窒素を使用したときと同じように単層カーボンナノチューブやナノホーンを合成できるようになった。以上の検討結果から,液中アーク放電法において水を使用する場合と液体窒素を使用する場合では,アーク部に供給されるガス組成が比較的不活性であることが単層構造ができるために重要であることがわかった。
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