導電性中空糸膜を用いた電界効果による遺伝子分離の臨床応用に関する基礎的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14750619
• 研究機関: 北海道工業大学
• 研究代表者: 菅原 俊継 北海道工業大学, 工学部, 講師 (70337012)
• キーワード: 導電性中空糸膜 / 電界効果 / 遺伝子分離 / 遺伝子濃縮 / ウイルス濃縮 / 血中ウイルス / 遺伝子診断 / 遺伝子分離キット

研究概要

導電性中空糸膜を用いた遺伝子分離法を、血中に存在するウイルスの検出(遺伝子診断)に利用することを最終目的とし、平成14年度は、次のような臨床応用に関する検討を行った。まず、本分離法の臨床応用を目指し、初めて血中ウイルスからの遺伝子分離を試みた。本法は、膜フィルターを使った遺伝子分離法であるため、血中ウイルスを対象にした場合、血球成分が膜フィルターの目詰まりを引き起こす可能性が考えられたため、それらの遺伝子分離に与える影響について調べた。対象として、何も手を加えていない全血、血球成分を取り除いた血漿、血漿からさらに血液凝固因子を除去した血清の3種類を準備した。全血に対しては予想通り、血液の吸引直後に血球成分によって膜フィルターの目詰まりが発生したため、遺伝子の分離を行うことができなかった。しかし、それらを遠心分離などによって取り除いた血漿、血清からウイルス遺伝子の分離が確認できた。肝炎ウイルスやヒト免疫不全ウイルスの検出は、現行でも血漿や血清から行われているため本法をそのまま遺伝子診断に適用できる。これとは別に、本法によって分離した遺伝子を最大限PCRに利用することを目的として、分離後の遺伝子を電気的にゲル中に濃縮し、それをPCRに適用したところ、ウイルスの検出感度の向上が認められた。この遺伝子濃縮操作と、試料の吸引量増加(ウイルス濃縮)で、感度を100立向上させることに成功した。これに加えて、PCR条件(Taq DNA Polymeraseやその他のPCR試薬)を再検討することによって、さらに感度の向上が認められた(未発表)。もうひとつの課題である簡易キットについても試作し、その評価を行った。その結果、若干の感度低下が認められるものの、血漿、血清からウイルス遺伝子の分離が確認できた。
現在は検出時間の短縮などを目指し、新規遺伝子増幅法(LAMP法)を使った検討を進めている。

研究成果

• [文献書誌] T.Sugawara, M.Ebikawa, K.Kimura, K.Kimura, et al.: "Study on the simple and rapid gene isolation system using the metal coating hollow fiber membrane"Desalination. Vol.148. 165-169 (2002)
• [文献書誌] K.Kimura, T.Sugawara, M.Ebikawa, K.Kimura, et al.: "Utilization of a newly established gene isolation technique with metal coating hollow fiber membrane for viral gene collection"Desalination. Vol.149. 269-273 (2002)
• [文献書誌] 海老川慎, 鈴木直行, 菅原俊継, 木村浩一, 木村主幸, 他: "導電性中空糸膜を用いたウイルス遺伝子の分離に及ぼす血中蛋白の影響"電子情報通信学会技術研究報告. MBE2002-85. 1-4 (2002)
• [文献書誌] 菅原俊継, 鹿野内崇, 木村浩一, 木村主幸, 三澤顕次, 他: "導電性中空糸膜を用いた遺伝子分離キットの作製とその評価"生体医工学. Vol.40-Suppl.. 82 (2002)
• [文献書誌] 海老川慎, 菅原俊継, 木村浩一, 木村主幸, 三澤顕次, 他: "導電性中空糸膜を用いたウイルス遺伝子の分離における血漿蛋白の影響"生体医工学. Vol.40-Suppul.. 81 (2002)
• [文献書誌] 鈴木直行, 海老川慎, 菅原俊継, 木村浩一, 木村主幸, 他: "遺伝子集積効果による導電性中空糸膜を用いたウイルス遺伝子分離法の感度向上"平成14年度電気関係学会北海道支部連合大会講演論文集. 339 (2002)