研究概要 |
実施した研究概要 本年度は、光触媒を用いた新規処理プロセスの構築の一環として、気相ガス状汚染物質を液相系内に濃縮、さらに分解生成物を保持しつつ光触媒で連続分解する新規の「濃縮捕集-光触媒処理プロセス」の提案と、その実証評価を行った。溶媒にフッ素系溶媒(冷媒)を用いた常温から低温までの捕集傾向の把握、UV光源を用いた液相光触媒分解、発光ダイオード(LED)を用いた省エネ光源の利用について検討した。さらに、分解効率向上のため、光触媒反応へ超音波照射を併用することも試みた。反応器には、容量200mLのPYREX製フラスコ型反応器を用い、UVランプは反応器中央に設置した円筒管より照射、また、超音波は反応器底部より照射した。 得られた成果 安定なフッ素系溶媒(FC)を用い、10,-10,-30℃の温度条件下においてトルエンの捕集実験を行った。その結果、低温条件で捕集効率が向上することが確認され、これは、FC中への疎水性物質の溶け込みが効いていることが確認された。次に、光源をUVランプから発熱、消費電力ともに低いLEDに変更した際の効果について検討したが、光量低下に伴う反応効率の低下は確認されたが、消費電力あたりの反応効率は十分効果的であった。これより、濃縮捕集後の連続分解には効果的な光源と考えられ、また、LED種の選択、配置形状、個数等の工夫により、さらなる反応効率の向上も見込めるものであった。さらに、FC溶媒は高価なこと、また、FC溶媒のみでは、水、酸素が不足するために効果的な光触媒反応が期待できないことから、FC/水の二相系溶媒の利用についても検討した。その際、水溶性、難水溶性の両物質を捕集、分解できるように、超音波を併用することでFC/水溶媒をエマルジョン化して用いることとした。直接、超音波が照射されると脱気効果も同時に働くために、捕集部と分解部を分離する必要性は示唆されたが、水溶性、難水溶性の両物質に使用できる点で利用価値の高い溶媒と考えられた。さらに、超音波の併用により、分解、無機化効率ともに格段に向上し、超音波を併用した液相光触媒分解の有用性が示唆された。これより、各要素技術の利点を複合的に利用することにより、「濃縮捕集-光触媒処理プロセス」の構築は十分可能であると考えられた。
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