火力発電所で発生するNOxを除去する排煙脱硝触媒や自動車排ガス浄化用触媒は高温領域で使用されるため、触媒の耐熱性がその性能を決める重要な因子になる。これら触媒に用いられている金属酸化物担体の耐熱性を向上させれば、触媒の長寿命化や高性能化につながると考えられる。これまで様々な方法が試みられているが、その一つにシランカップリング剤(RnSIX_<(4-n)>)を担体表面に修飾する方法がある。本研究では、分子内にふたつのケイ素基をもつシラン剤ビストリエトキシシリルエタン(Bis)を用いて重要な触媒担体である酸化チタンの表面を化学修飾し、その耐熱性の改善効果ならびに担体の細孔構造について検討した。 用いたTiO_2は大表面積(300m^2g^<-1>を有しているが、耐熱性は低く550℃で焼成すると表面積は著しく減少した。得られたBis-TiO_2のIRスペクトルにはSi-O結合による吸収がみられ、また、元素分析の結果からもSiの存在が確認された。また高温で焼成することにより起こる表面積の低下、結晶子径の成長、相転移のいずれもがBis修飾により大幅に抑制された。これは表面に存在するSiが粒子間のシンタリングを抑制していると考えられ、TEMにおいて粒子成長が抑制されていることが確認された。またBis修飾量の増加とともに、耐熱性も向上した。もとのTiO_2、Bis-TiO_2の窒素吸着等温線はともにIV型であり、ヒステリシスが現れていることからこれらはメソ、マクロ孔を有していると考えられる。焼成温度が上がるにともなって、細孔半径は大きくなり細孔容積は減少した。このことは粒子がシンタリングし大きな粒子になることで、小さな細孔はつぶれ新たに半径の大きな細孔を形成することを示している。シラン剤を添加することにより、細孔構造の大きな変化は抑制され、十分な細孔容積を維持していた。
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